真性多血症・慢性骨髄性白血病

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骨髄増殖性腫瘍の中の真性多血症・慢性骨髄性白血病

骨髄増殖性腫瘍は、骨髄中の造血細胞の成長や増殖の過剰、骨髄の繊維組織の過度な増殖により造血細胞が骨髄外に押し出される病気です。骨髄増殖性腫瘍は主に以下のものがあります。
 

真性多血症
原発性骨髄線維症
本態性血小板血症
慢性骨髄性白血病

 
これらの疾患のなかで、当院でも診療可能な真性多血症、慢性骨髄性白血病についてご紹介します
 

真性多血症

真性多血症は、骨髄中の造血細胞の異常で赤血球を主体に白血球・血小板の全種類の血球が過剰に作られる病気です。
 

原因

JAK2遺伝子の突然変異により、血球の過剰な生産を促進するたんぱく質が作られることが原因です。
 

症状

疲労感や脱力感、ふらつきや息切れを感じることがあります。赤血球が増えることで血液の粘性が高まるため、血管内でかさぶたができる血栓症の症状を呈することもあります。
 

診断

血液検査で血球数の異常、遺伝子異常を見出すことが診断となります。
 

治療

赤血球数が過剰な場合には瀉血を行って過剰な赤血球を減らします。血栓症対策のために抗血小板薬の服用をします。場合によっては抗腫瘍薬を内服して血球数のコントロールを図ります。当院でも瀉血療法、抗腫瘍薬内服で通院している患者さんがいらっしゃいます。

慢性骨髄性白血病(CML;Chronic Myelogenous Leukemia)

慢性骨髄性白血病(CML)は白血球のうち好中球、好塩基球、好酸球、単球に成長する細胞ががん化し、骨髄の正常な細胞を閉め出す進行の緩やかな病気です。
 

原因

フィラデルフィア染色体という、特定の2つの染色体の配列が入れ替わることによる染色体異常が原因です。フィラデルフィア染色体から作られる異常な酵素が白血球の増殖に異常を起こします。
 

経過

CMLには次の3つの病期があります。

慢性期

5~6年にわたり極めてゆっくり進行します。この時期には症状が出現することは稀で、健康診断の血液検査で発見されることが多いです。

移行期

病気が早く進行し始め、症状が出現してきます。

急性転化期

未熟な白血病細胞が出現し、重い症状、重篤な感染症や過剰な出血などがみられるようになります。

 

症状

慢性期には症状の出現は稀ですが、疲労感や脱力感・食欲不振・体重減少・寝汗・脾臓腫大による腹部膨満感が表れることがあります。移行期〜急性期では正常な血球が減少することに伴い、感染症による発熱、貧血による脱力・息切れ・胸部症状、血小板減少による出血などがあります。
 

診断

血液検査でCMLが疑われれば、血液・骨髄検査で染色体分析を行い、フィラデルフィア染色体を認めることが診断になります。
 

治療

過去には造血幹細胞移植のみが唯一の治癒が望める治療でした。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の出現によってフィラデルフィア染色体から作られる異常タンパク質の働きを抑える治療が主流になっています。この治療により90%の人が5年以上生存し、そのほとんどが10年後も良好な状態を維持しています。治療成績は移行期〜急性転化期になるほど低下します。場合によっては造血幹細胞移植が選択されることもあります。当院でもTKI治療で通院している患者さんがいらっしゃいます。